2020年8月、VeroCity Effects Pedals CEO大本氏をお迎えしてオンライン対談を行いました。
ペダル製作秘話から全挿と半挿の違いを解説など、内容盛りだくさんな内容となっております。

動画内では時間の都合上、割愛した部分も掲載しておりますので是非、お読みいただければと思います!

Q.ブランド立ち上げの経緯、ブランド名の由来は?

A.今からちょうど 6 年前の 2014 年に立ち上げました。
当時、ハンドメイドエフェクターに使われる基板としては当時目新しかった Vero Board を使用した
レイアウトを海外サイトで見かけるようになり新しいプラットフォームとしてかなり興味深く感じた事で導入したのが最初のきっかけです。

取り入れた結果、当時の関わりのあるアーティストに一早くサウンドを認められ、店頭に委託で出す事を勧められました。
店頭に出品するためにブランド名を VeroCity と付けました。
名前の由来は、”City on the Vero Board”
基板がまるで都市の様に自分の目に映ったことが由来です。
由来を知らない方には、「舌街」(したまち)と呼ばれる事もありましたね。
今は無き吉祥寺の楽器店でデビューを飾る事になりました。

最初の機種は King of Rock で、現在の VeroCity を印象付けているハイゲインでは無かった事が鮮明に記憶として残っています。
ブティックペダルのハイゲインというのが、当時物珍しいというか、
お店の方もどうやって売っていいのか怖がっていた事が印象的でした。
そこにハイゲインを数機種試しに置かせて頂いたところ、またたくも無く売れ、正に求めていた市場の反応を得られました。

Q.半挿し(Return 挿し)、全挿し(Amp input 挿し)という発想はどこから?

A.90 年代デジタルが無かったころ、私が海外から直輸入品として入手したミキサーの説明書に裏機能とも呼べる半挿しの説明がありました。
入力、出力する信号を二種から選べる事を当時から知っていまして、エフェクターメーカーを立ち上げる際に、この機能を搭載しようと目論んでいました。

特に、アンプエミュレーションの出力に搭載する事で実用性のある出力になる事は明確でした。
当時、Input 挿し用の出力と Return 挿し用の出力の二つの出力を持った物とスイッチで出力モードを切り替える物がプロトタイプとしてありました。
何故、一般的な手法を採用せず「半挿し」という方式を選んだかというと、
半挿しにする事で、ギタリストにとってのモードの視認性、
また、モード切替時による接続先のスピーカーからのノイズを最小限にする画期的な方法として、
直感的にモード変更を有効にし壊れにくく堅牢という結論が出て採用に至りました。
スイッチ切替ではスイッチのオンオフに戸惑ってどちらかわからなくなる、
ジャックについてもどちらが適した出力かパネルの文字を確認しないとわからなくなる場合があり、
リハーサルやライブでのモード変更に時間を要してしまう事があります。
また、エフェクター本体側のジャックを抜く必要がなくなるので、接続先のアンプから無接続のノイズや接続時のバチっといったノイズを出さなくて済むといった利点もあります。
また、MXR サイズに多くのモデルを収めたいといった事情と、余計なスイッチやジャックによるデザインのバランスを欠くことを避けたい理由もあります。

Q.そもそもエミュレートとは?アンプシミュレーターとはちがうの?

A.VeroCity が何故エミュレートとしてリリースしている大きな理由は、実機の回路はなるべくそのままに Vero Board に移植し真空管に代わる代替素子を使い、
ターゲットとするアンプ回路を事細かく模倣している事によるものです。
もちろん出音を目的としていますが、真空管の代替となるところ以外は、事細かく実機アンプの回路の模倣が行われています。

多くのシミュレーターは結果の為に、全てを別の回路で置き換えている事、
例えばデジタル演算だったり IC だったりする事で実機で使われている様なシグナルチェインとは異なった回路や演算が用いられるのですが、
エミュレーターでは、真空管の代替素子以外の部分ではほぼ耐圧だけ異なる同じ値の抵抗やコンデンサー等が使われています。
それらの Vero レイアウトを設計し可能な限りターゲットのサウンドになる様にした結果が VeroCity のペダルとなります。

Q.大本氏が使用しているモデルなどありますか?理由もお教えください。

A.L-NY-Dual と L-NY-CL,BLS-3 を使用しています。
理由は自分がもともと、1996年にGibsonNIghthawkのエンドーサーであって、
その当時からそのギターに最もあった Laney VH-100R を 90 年代からずっと使用してきたからです。

Dual 仕様にした理由は、リードギター用のGain とVolumeを大きくしたチャンネルを直ぐに呼び出したいからです。
スイッチャーもパッシブ仕様の VeroCity BLS-3 を使用し、リレー切替の遅れ等のもたつきの無い瞬時の切替を可能としています。

Q.製品の中にはオリジナルが入手困難な物も多数りますがどうやってサウンドを再現しているのか?

A.実の処、自分はアンプコレクターで、現在リリースしているモデルの実機を7割方所有しています。
また、所有していないアンプのモデルもありますが、長年レコーディングエンジニアをやって来た事で、
収録させて頂いた近しいアーティストに持っている方が居る事で借りたり、実際に楽器店で実機を入念にチェックさせていただく事もあります。
シミュレーションと異なり、演算した結果や、波形による比較と異なり、
エミュレート構造から実機の回路図が入手できる限り移植が可能となる物が多くあり、
実際に私が実機を弾いた時のレスポンスに近くなる様に試行錯誤を繰り返し、調整を施します。

本当に入手困難な機種、実機すら触った事の無い物については、完全に回路図からの移植の様になっていますが、
YouTube 等の動画での出音を参考にしたり、場合によっては DAW のプラグインの正確に再現されていると思われるサウンドと比較したりすることもあります。
レコーディングエンジニアも長い間従事していましたので、キャビネットから収録されたサウンドの元の出音がどうであるという想像も自分にとっては、
出来る範囲ですし、VeroCity の後にキャビネットシミュレーター等を通した時の挙動も入念にチェックしています。

Q.ユーザーからのオーダーで製作していただく事は可能ですか?

A.ネット上に実機の回路図があり、バックオーダーの状況次第になります。
現在、取り寄せによる注文が一定数を超えており先ずはそれをこなさない事には、次のリクエストに応えるには時間が掛かってしまう印象です。
今まで、ユーザーからのリクエストで印象深かった機種は、
FTM-Custom,FVK(お茶の水駅前店の堀様)
FRD-Custom 実際に実機を持たれているユーザー様
八百式
PLEXIGLASS
それから、基本的には、真空管の置き換えを行っている為、元からトランジスタの回路を持つ
エミュレーションについては現在の処、行っていません。ただ、近い将来、小型クローンとして作っても良いのかなと考えています。

大本さんお忙しいところお時間作っていただきまして有難うございました!

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