約2年半程前より「VERO to PCB」仕様へアップデートが図られたVEROCITY Effects Pedalsのラインナップですが、今回改めてこの件について代表でビルダーである大本氏にお伺いしました。

Q1:「アンプの回路をコンパクトエフェクターのサイズで再現する」と言うコンセプトを再現するべく採用していた「VERO Borad」から「VERO to PCB」へ仕様変更するに至った経緯をお聞かせいただけますか?
大本氏:新機種の製作やユーザーの希望を叶えるために、PCB化への流れは自然と生まれました。まずは既存の限られた機種のPCB化から始め、数度のリプロダクションを経た結果、品質差を感じる事が無くなったため、全機種での採用となりました。
特に最新の仕様においては、PCB化により基板がしっかりと内部固定されるようになりました。これにより、各機種に搭載されたトリマー及び内部modスライドスイッチも、以前の仕様より多く追加することが可能となりました。また、トリマー及び内部modスライドスイッチには、気軽にアクセスすることが可能です。
これらの内部modスライドスイッチは、真空管アンプ実機では感電の恐れゆえに内部搭載が不可であり、触れることもできない部分となります。エフェクター電圧で動作するVEROCITYによるエミュレーションでは、気軽に変更可能となっています。
また、*Hammond A-sizeによる世界最小とも言えるアナログエミュレーターを制作する事に成功しました。
ペダルボードのスペースを更に生かす事が可能となります。
(*Hammond A-size=世界中の電子機器メーカーやDIYビルダーに愛用されている電子部品・筐体メーカーHammond社が製造する小型のアルミケース。Hammond A-sizeのエミュレーターは、現在 Rev.F-A / FRD-A / XTC-A / VH34-A / FTR-A / 13-CLA の6機種がラインナップされています。)

Q2.メイン基板の仕様を改めるにあたり気を付けられた点はありましたか?特にサウンドが気になられる方は多かったと思われます。
大本氏:私も当初は、P to Pやハンドワイヤリングに対する信仰はありました。
長い期間、VERO Boardによる製作を行っていたこともあり、PCB化については「サウンドが改悪されてしまうのではないか」という懸念を抱きつつ取り組んでみたところ、ボード上のワイヤリングやP to P以上に、搭載されているFETおよび抵抗やコンデンサ等の素子が持つ音色や、基板のレイアウトの方が回路においては最重要であることを、PCBに移行してからも再認識できました。
長年のVERO Board時代に培ったパーツの選別を、ハンドメイドにて引き継ぐことで、一個体毎の調整が同様に施された個体が出荷されています。
また、PCB化によって一度に大量生産を行うような外部委託は行わず、一点一点ハンドメイドにて製作され、完成時には私自身の試奏によって、細部までチェックおよび調整を行い、出荷しています。
Q3.個人的にはサウンドの差異を感じず、PCB化に伴い追加されたさまざまな機能が、ユーザーにとってより好みの使用方法やサウンドを実現するための大きな恩恵になったと感じています。
PCB化に際して、これらの追加機能についてはすでにアイデアがあったのでしょうか?
大本氏:PCB化において、VERO Board仕様と比べて優劣は感じられないというユーザーフィードバックを多数頂いています。
むしろ、旧仕様の復刻について、もっと多くのお問い合わせが来ると思っていましたが、現状ではPCB化を問題なく受け入れて頂いている印象となります。一部のユーザー様に至っては、VERO to PCB仕様の同機種を買い替えたり、買い足したりして頂いた事もございます。
私もそうでしたが、一部の方は生基板の優位性についての先入観の部分が大きいかと思います。
私の所感では、PCB化=「工場での大量生産」「演奏による検品が行われない」という、いわゆる大量生産製品のイメージを持たれるのではないかと思っています。
しかし、VERO to PCB仕様のVEROCITY Effects Pedalsは、設計から製作、検品、試奏に至るまで、すべてにおいてビルダーの手で一点ずつ行われているため、これまでと同様ブティックペダルであることに変わりありません。
追加機能の発想については、VEROCITY設立時から持っていました。
VERO to PCB化により、様々な追加機能をペダル上のコントロール及び内部に搭載し、一つのペダルでありながら無限の可能性を引き出せる様な造りを更に目指す事が可能となりました。
ALT機能(Adjustable Lead Trimmer)というB2モデルの主要モデル及び最新仕様のVEROTwinモデルに搭載されている機能については、正にVERO to PCBによる大きな追加機能と言えるでしょう。
単なるGain Boostやチャンネル切替に留まらず、音量可変をプリセット出来る機能を小型筐体で搭載出来た事はライブやリハーサルでかなり役立ちます。
(☆ALTオフ時には一切の信号の変更が行われません。)
VEROTwin Premiumでは、ES仕様(外部スイッチによるリモートオプション)をクリーンが片側に搭載された機種に限られますが、殆どの組合せにおいて外部切替が可能となりました。
PCB化により、高速なリレーの搭載が可能となった為、初期の機械式の切替よりも速く、切替時に発生するポップノイズも軽減されています。
Q4.現在も精力的に新しい製品発表、アップデートが行われていますが、今後も新機種の追加の予定されていますか?
大本氏:VERO to PCB化により、VERO Boardでは今まで着手する事の出来なかった機種がウェイティングリストに沢山記載されています。
既存機種のアップデートや特別版についても並行して行っていきます。
昨今オールインワンのデジタルプロセッサが全盛となってきている印象がありますが、VEROCITYアナログエミュレーションならではのメリットが多数ございます。
- アナログならではの遅れも無くリアルタイムに得られる操作性、電源を入れてから待たずに演奏が可能。
- 一般的なセンターマイナスのDC9Vでの省電流設計及び軽量で堅牢な造り。
- エフェクター又はプリアンプとしての使用が可能。(主要機種にて半挿機能は健在)
- ほぼ実機と同じ回路を搭載し操作できるトーンコントロール。
- 歪んでいながらもギターのボリュームを絞った時に得られるクランチ~クリーン。
- 実機では危険で触る事の出来ない内部modコントロールスイッチを各機種に合わせて搭載。
上記の様な利点を持ち合わせております。
真空管をFETに置き換えたという文言だけで、VEROCITYは長い年月を経てきたわけでは無いと確信しています。
私自身も実際のリハーサルやライブステージを通じ、また様々なギタリストが実際に使用している事で、単なる実機の代替に留まらないと感じています。
今後とも、使用機材の選択肢の中に”VEROCITY”をどうぞよろしくお願いします!